
第64代 理事長 長山 家康
2025年度 LOMスローガン「未来をつくる、世界を動かす。私たちの」
1.はじめに
海洋国家・日本の国境を成す島々、八重山。ここで育った私は、広大な海の 雄大さと同時に、地域の絆がもたらす底知れぬ力を目の当たりにしてきまし た。美しい海と緑豊かな山々、そして人々の温かな心―それらこそが八重山の 真の魅力です。しかし、離島であるがゆえに、教育や医療、エネルギーといっ た分野において都市部と比べ多くの課題を抱え、若者が故郷を離れる大きな要 因にもなっています。このままでは、私たちが誇る豊かな文化や自然が失われ てしまうかもしれない。その危機感が私の胸を焦がしてきました。 青年会議所の活動を通じて感じたのは、私たちがわずかでも勇気をもって一 歩を踏み出せば、地域を活気づけ、未来への道筋をつくり上げられるという確 信です。実際に行動し、挑戦することで、八重山の価値を世界へ広げることは 決して夢ではないと信じています。 そして今、私は理事長として、「未来をつくる、世界を動かす。私たちの力 で。」というスローガンを胸に、八重山を持続的に発展させ、世界と繋がる地 域へと導きたいと願っています。この島々が次世代へ誇りとともに引き継がれ るために、私たちは手を携え、挑戦を重ねていく決意です。
2.新たな国際線開拓に向けた取り組み
八重山は日本の最南端に位置し、地理的には国内のどの都市よりも世界に近 い存在です。それにもかかわらず、これまでは主に国内観光に依存してきまし た。私たちはこの地の可能性を、より広い視点で捉える必要があります。新た な国際線の就航先を開拓することで、八重山を国境を越えた観光地として成長 させたいと考えています。 特に北欧や東南アジアからのチャーター便誘致を目指し、観光閑散期である 冬季にも安定した観光需要を生み出したいという願いがあります。長距離旅行 者は長期滞在の傾向が強く、消費単価も高いことがデータで示されています。 また、石垣島の伝統文化や多彩な自然に深い興味を持つ海外の方々の来訪は、 地域経済にも大きく寄与するでしょう。こうした取り組みにより、八重山を訪 れる交流人口を増やし、世界的に魅力あふれる観光地としての地位を築き上げ ることを目指します。
アドベンチャーツーリズムの開発
八重山といえば美しい海が思い浮かびますが、実は豊かな山々こそがもうひ とつの大きな魅力です。幼少期から、私はこの山々に囲まれた自然の中で成長 し、その偉大さや優しさを肌で感じてきました。ところが、観光面での活用は まだ十分とは言えません。そこで、自然環境をできる限り守りながらも、トレ ッキングやアドベンチャーツーリズムといった新しいコンテンツを積極的に開 発していくことが重要だと考えています。 これにより、八重山の未知なる魅力を世界の旅行者に伝えるだけでなく、地 域経済の多角化や持続可能な地域づくりにもつなげたいと願っています。自然 の息遣いを感じながらの冒険は、八重山が提供できる体験価値を一段と高めて くれるでしょう。
3.国境の島々の持続可能な発展に向けて
離島ネットワークの構築と離島振興のさらなる制度化
離島で生きることは、都市部にはない困難と常に向き合うことを意味しま す。美しい海や島々に囲まれた八重山であっても、医療や教育の格差、物流の 不便さなど、多くの課題があります。これらの問題を解決するためには、八重 山だけでなく全国の国境離島と連携し、強固なネットワークを築くことが必要 不可欠です。 全国の青年会議所や団体と協力し、国境離島が抱える課題について調査研究 を行う枠組みを整備することで、離島振興に対する国の制度化を力強く働きか けていきます。この取り組みにより、日本中の離島が一丸となって課題解決に 臨み、地域経済の基盤を強化し、持続的な発展を遂げられるよう行動を起こし ていきたいのです。
次世代エネルギー「核融合発電」導入への取り組み
八重山諸島における現在のエネルギー供給は、火力発電、なかでも石油に大 きく依存しています。しかし、石油は世界情勢に翻弄されやすく、中東やロシ アなどの産油国の政治的不安定や戦争、制裁などによって価格や供給が乱高下 するリスクがあります。 さらに、自然災害や有事の際には輸送経路が途絶する危険性も高まり、離島 であるがゆえにその影響は深刻です。 こうした状況を踏まえれば、石油への依存を改め、将来的に安定したエネルギ ー源を確保することが急務と言えます。そのために注目されているのが、持続 可能かつクリーンな次世代エネルギー「核融合発電」です。日本政府も核融合 技術の研究開発を進めており、離島地域でのモデルケースとしての導入には大 きな意義があると考えられます。 私たちは、石垣島をはじめとする八重山諸島での核融合発電導入に関する市 民との議論を促し、将来的に安定したエネルギー体制を築いていくことを目指 しています。
4.日本一の子どもたち
子どもたちとのビックイベントの企画・実施
子どもたちと共に創り上げるイベントや祭りは、八重山の未来を担う彼らに 地域の自然や文化を体感してもらうだけでなく、大人と子どもが一体となって 目標を達成する貴重な機会でもあります。私自身も振り返ると、幼少期に地域 の大人たちと接する中で、人生に対する姿勢や価値観が形作られてきたと強く 感じています。大人たちが真摯に取り組む姿を間近で見ることで、子どもは自 然と学び、成長していくのです。 今回の取り組みでは、子どもたちが主体となって「日本一のユニークなお祭 り」を考え、実行する計画を掲げています。その過程において、大人たちが積 極的にサポートをし、アイデアを形にしていくことで、“世代を超えた絆”と “共に達成する喜び”が生まれます。大人の背中を見て育つ子どもたちは、 「目標に向かって力を尽くすことの素晴らしさ」を身をもって体感し、未来へ の大きな可能性を切り拓いていくはずです。
国際線就航地域との子どもたちの交流
八重山は、日本の中でも最も海外に近い地域です。この地理的な利点は、子ど もたちに国際感覚を養う絶好の機会を与えてくれます。日本国内にいながらも 海外との交流が身近に感じられる環境こそ、彼らがグローバルに活躍する人材 へと成長するための最適な土台だと考えます。 私自身も、海や山、そして地域の人々との交流を通じて多くを学んできました が、さらに世界と繋がることで得られる刺激や気づきは、子どもたちの未来に とって計り知れない価値を持つと感じます。国境離島ならではの特徴を活か し、国際線の就航先との子どもたちの交流を促進していきます。 少子高齢化や市場縮小が進む日本社会にあって、国際的なつながりを持てる若 者の存在は、地域を活気づける大きな力です。国際交流を通じて視野を広げた 子どもたちは、やがて世界へ羽ばたき、八重山の魅力を世界へ発信する“アン バサダー”としての役割も果たしてくれるでしょう。私たちは、彼らの未来を 支えるための環境づくりを全力で進めていきます。
5.組織運営
総務広報委員会は、組織全体の活動を円滑に進める要となる存在です。理事 会の運営や年間行事の計画・実施に加えて、各委員会のサポートを行い、組織 全体が一体となって活動できるよう努めます。会員同士の意思疎通をスムーズ に図ることで、私たちが掲げるビジョンをより強固なものとし、実行力を高め ていくのです。 さらに、広報活動の強化にも力を注ぎます。私たちの活動や成果を地元メデ ィアや SNS で伝えるのはもちろん、地域 FM ラジオで番組を持つことで、住民 の方々と直接対話できる場をつくりたいと考えています。ラジオは幅広い世代 にアプローチできるメディアであり、親しみやすく身近な存在として地域に根 付いています。この番組を通じ、私たちの事業やビジョンを紹介し、共感の輪 を広げるとともに、より多くの協力者と出会うきっかけを生み出していきま す。SNS を活用することで、若い世代や島外・海外の人々にも私たちの活動を 知ってもらい、関心を持っていただくことが可能です。情報発信を徹底し、八 重山青年会議所の取り組みを広く共有することで、新たな仲間が加わり、組織 基盤がより強固なものとなっていくと信じています。
6.会員拡大
青年会議所が目指す「明るい豊かな社会」の実現には、何よりも“同じ志を持つ多くの仲間”の存在が欠かせません。八重山青年会議所がこれまで数多くのプロジェクトを成功に導いてきたのも、先輩たちが熱意あるメンバーを募り、共にまちづくりに挑戦してきたからにほかなりません。
しかし、少子高齢化や人口減少が進むいま、若い世代や多様なバックグラウンドを持つ人材を積極的に取り込む努力がさらに求められています。そこで、私は「会員拡大」を組織の未来を左右する最重要課題の一つと位置づけ、以下の取り組みを進めてまいります。
わかりやすい情報発信
SNS や広報誌、地域 FM ラジオなど多様なメディアを駆使し、青年会議所の魅力や活動内容をもっと身近に感じてもらえるよう発信を強化します。“JCは難しそう”というイメージを払拭し、「ここに入れば、面白い挑戦ができる」と思ってもらえるようなストーリーを積極的に伝えていきます。
メンバー同士の連携・紹介制度
それぞれの交友関係や仕事関係を通じ、“青年会議所は自分を成長させる場だ”と熱い想いをもって語り、新たな仲間を迎え入れる仕組みを強化します。また、入会前の見学会やオープン例会を充実させることで、実際に JC 活動を体験してもらえる機会を増やします。
新たな世代・多様な分野へのアプローチ
学生や若手社会人、女性や異業種の方々など、多様な層にアプローチして組織全体をより活気あるものへと成長させます。会員拡大は人数の増加だけが目的ではありません。新しい視点やアイデアが加わることで組織が進化し、まちづくりへの情熱が絶えず循環する“イノベーションの源泉”となります。メンバー一人ひとりが自らの成長を実感できる“魅力的な青年会議所”を築き上げることで、さらに大きな力を発揮していきたいと考えています。
7.むすびに
八重山は、豊かな自然と独自の文化が織り成すかけがえのない地域です。しかし、その財産を次の世代へ手渡すためには、私たちが今、変化を恐れず動き出す勇気を持たなければなりません。青年会議所として、地域の未来を共に創り上げ、持続可能な発展を実現するために歩みを進めていきます。
私が目指すのは、八重山が日本のみならず世界に向けて輝き、次の世代に誇りを持って引き継がれる場所となることです。そのために、「未来をつくる、 世界を動かす。私たちの力で。」というスローガンのもと、理事長としての一年間を通じて、皆さまと共に全力で取り組んでいく所存です。
新たな挑戦に立ち向かい、八重山という島々に息づく可能性を世界へと広げる――その大切な一歩を、共に踏み出してまいりましょう。